医業停止・歯科医業停止処分を受けた方へ
2 医業停止・歯科医業停止を受けた場合(1)
実際に医業停止・歯科医業停止を受けた医師・歯科医師の多くが関心を寄せる事項をまとめました。
病院の管理者
医療法10条では、病院の管理は、「臨床研修等修了医師・臨床研修等修了歯科医師」がしなければならないと規定しており、「臨床研修等修了医師・臨床研修等修了歯科医師」とは、所定の臨床研修修了のほかに、医師・歯科医師の再教育研修を命じられた場合はこれを修了したものを指すとしています。したがって、法律上は、再教育研修を修了すれば、病院の管理者になることができると考えられます。
研修終了後の医業停止・歯科医業停止期間中の管理者について法律の定めはありませんが、変更するように指導するのが厚生労働省の方針のようです。したがって、停止期間中に病院を継続したい場合は、代診の医師・歯科医師をお願いし、管理者に就任してもらう必要があるでしょう。
開設者
医療法は、臨床研修等修了医師・臨床研修等修了歯科医師が医院を開設する場合は都道府県知事への「届出」(医療法8条)、それ以外の者が開設するときは「許可」(医療法7条1項)が必要であると規定しています。許可には、「不許可」の場合もあるという意味が含まれています。
よって、医業停止・歯科医業停止期間中に診療所を開設する場合には許可が必要、ということになります。すでに都道府県知事への届出によって開設済みの診療所については、明文の規定がないため、解釈の問題となります。
「届出」とは、「行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く。)であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを含む。)をいう。」と定義されています(行政手続法2条7号)。そして、届出は、法令上当該届出の提出先とされている行政庁に到達したときに通知行為としては完了することからすれば、医業停止・歯科医業停止処分によって開設者たる地位には影響がないとも解されます。
かかる解釈によれば、医業停止・歯科医業停止処分によって開設者を変更する必要はないものと考えられます。
なお、現在の実務上の運用としては、個人開設の診療所、歯科診療所において管理者を変更する場合は原則、新管理者による新規開設の手続が要求されています。
医療法人の理事
医療法人の理事は、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から起算して2年を経過しない者はなることができません(医療法46条)が、医業停止・歯科医業停止期間中であることは欠格事由には当たりません。したがって、刑罰を受けずに医業停止・歯科医業停止処分を受けている方については、理事を辞任する必要はないものと考えます。
病院名、院長、病院長、医局長等の名称
院長、医局長などの、病院内における役職は、あくまでその病院内でのものであり、法律上の役職ではないので、変更する必要はありません。同様に、病院名の変更も必要ありません。
もっとも、噂や評判等に対する対策として、役職からの退任や、病院名の変更などが一定の効果を上げる場合もあると考えられます。