類型ごとの処分の軽重の傾向

2 具体的事案ごとの考え方

実際の行政処分の軽重は、医師・歯科医師の行政処分に対する基本的考え方を踏まえつつ、さらに具体的な事案の類型に応じた検討がされます。その際、司法処分の量刑等を参考にしつつも、それだけに限られることなく、医師・歯科医師という立場との関係等に着目して処分内容を決めようとする傾向があります。

医師法・歯科医師法違反(無資格医業・歯科医業の共犯等)

医療が国民の健康に直結する極めて重要なものであることから、医師法・歯科医師法において、医師・歯科医師の資格等を定めています。

国民の健康な生活を確保する任務を負う医師・歯科医師自身が医師法・歯科医師法に違反する行為は、その責務を怠った犯罪として、重い処分が想定されます。

医療法違反(無許可開設の共犯等)

医療法は、病院の開設及び管理等に関し必要な事項を定めることにより、医療を受けるものの利益の保護を図り、国民の健康の保持に寄与することを目的としています。

このような法令に、国民の健康な生活を確保する任務を負う医師・歯科医師自身が違反する行為は、基本的倫理を遵守せず、国民の健康を危険にさらす行為であることから、重い処分が想定されます。

保健師助産師看護師法等その他の身分法違反(無資格者の関係業務の共犯等)

医療関係職種の身分法は、医師・歯科医師の補助者として医療に従事する者の資格等について規定しており、医療に関する基本的な法令といえます。

このような医療に関する基本的な法令について、医療において指導的な立場にある医師・歯科医師自身が違反する行為は、医師、歯科医師が当然に果たすべき義務を怠った犯罪として、医師法・歯科医師法違反と同じく、重い処分が想定されます。

薬事法違反(医薬品の無許可販売等)

薬事法は、医薬品等の品質確保に必要な措置等を講じることにより、保健衛生の向上を図ることを目的としています。

このような薬事法について、国民の健康な生活を確保する任務を負う医師・歯科医師自身が違反することは、基本的倫理を遵守しないで国民の健康を危険にさらす行為として、重い処分が想定されます。

薬物事犯(麻薬、向精神薬、覚せい剤及び大麻の不法所持、自己使用等)

国民の健康な生活を確保する任務を負う医師・歯科医師として、麻薬等の有害性を十分認識しているにもかかわらず、自ら違反したということに対して、重い処分が想定されます。

殺人、傷害、暴行等(殺人、殺人未遂、傷害、傷害致死、暴行等)

人命や身体の安全を守る立場にある医師・歯科医師が、殺人や傷害の罪を犯した場合には厳正な処分がなされることが想定されますが、事案に応じて、殺人・傷害致死という重大事案は当然に重い処分が想定され、その他の暴行・傷害等については、医師・歯科医師としての立場や知識の利用の有無や、犯罪に及んだ情状等を考慮して判断されます。

業務上過失致死傷等

(1)交通事犯(自動車運転過失致死傷、道路交通法違反等)

自動車運転過失致死傷等については、医師・歯科医師に限らず起こすおそれのある行為であり、また、医師・歯科医師としての業務と直接の関連性がなく、その品位を損する程度も低いため、基本的には軽い処分が想定されます。

もっとも、救護義務を怠ったひき逃げ等の悪質な事案については、人命や身体の安全を守るべき立場にある医師・歯科医師としての倫理が欠けているとして、重めの処分が想定されます。

(2)医療過誤(業務上過失致死傷等)

人の生命及び健康を管理すべき業務に従事する医師・歯科医師は、危険防止の為に医師・歯科医師として要求される最善の注意義務を尽くすべきものであり、過失が明らかな場合や繰り返し行われた場合等、医師・歯科医師として通常求められる注意義務が欠けているという事案については、重めの処分が想定されます。もっとも、病院の管理体制、他の医療従事者における注意義務の程度や生涯学習に努めていたかどうかという事情も考慮されます。

わいせつ事犯(強制わいせつ、児童福祉法違反、迷惑防止条例違反等)

国民の健康な生活を確保する任務を負う医師・歯科医師は、倫理上も相応なものが求められますが、わいせつ行為は、医師・歯科医師としての社会的信用を失墜させ、他人の身体を軽視するものと考えられます。特に、診療の機会に医師・歯科医師としての立場を利用したわいせつ行為は、国民の信頼を裏切る悪質な行為として、重い処分が想定されます。

贈収賄(収賄、贈賄等)

贈収賄は、医師・歯科医師としての業務に直接関わる犯罪ではありませんが、医師・歯科医師としての品位を損ない、信頼感を喪失させるものであるため、行政処分の対象とされます。特に、医師・歯科医師としての地位や立場を利用した事案は、悪質なものとして重めの処分が想定されます。

詐欺、窃盗等(詐欺、同幇助、窃盗等)

詐欺・窃盗は、医師・歯科医師としての業務に直接関わる犯罪ではありませんが、医師・歯科医師としての品位を損ない、信頼感を喪失させるものであるため、行政処分の対象とされます。特に、医師・歯科医師としての立場を利用して、虚偽の診断書を作成・交付するような行為は、業務に関連した犯罪であり、医師・歯科医師の社会的信用を失墜させる悪質な行為として、重い処分が想定されます。

文書偽造(虚偽診断書作成、同行使、有印公文書偽造等)

文書偽造は、医師・歯科医師としての業務に直接関わる犯罪ではありませんが、医師・歯科医師としての品位を損ない、信頼感を喪失させるものであるため、行政処分の対象とされます。特に、虚偽の診断書を作成・交付するなど、医師・歯科医師としての立場を利用した事案は、重めの処分が想定されます。

税法違反(所得税法違反、法人税法違反、相続税法違反等)

脱税は、医師・歯科医師としての業務に直接関わる犯罪ではありませんが、医師・歯科医師としての品位を損ない、信頼感を喪失させるものであるため、行政処分の対象とされます。特に、診療収入に関係する脱税など医業・歯科医業に関わる事案は、医師・歯科医師としての職業倫理を欠くものとして、重めの処分が想定されます。

診療報酬の不正請求等(診療報酬不正請求、検査拒否)

診療報酬の適正な受領は、医師・歯科医師の職業倫理として遵守すべき基本的事項であり、診療報酬不正請求は、非営利原則に基づいて提供されるべき医療について、医師・歯科医師としての地位を利用し社会保険制度を欺いて私腹を肥やす行為であるものとして、行政処分の対象とされます。保険医等の登録の取消処分がなされた場合でも、それとは別に、医師法又は歯科医師法による行政処分がなされます。特に悪質性の高い事案の場合には、事案の性質を考慮して処分されることになります。

また、健康保険法等の報告、出頭及び検査等を拒否して保険医の取消を受けた事案については、社会保険制度の下に医療を行う医師・歯科医師に求められる職業倫理から許されるべきでなく、より重い処分が想定されます。

各種指定医の指定医取消等の処分事由となった行為(精神保健指定医、難病患者医療法に基づく指定医、児童福祉法に基づく指定医 等)

各指定医については、それぞれの根拠法に基づき業務を定めており、当該指定医に指定された者以外が、その業務を行うことは禁止されています。

指定医については、その社会的責務の重さから、指定を受けた上で関係業務を行うことができる仕組みとされているものであり、当該業務の遂行に当たっては、医師又は歯科医師としてよりいっそうの職業倫理の遵守が求められます。

指定取消又はこれに準ずる処分を受けることとなる行為については、当該社会的要請として求められる業務に対する国民の信頼を失墜させ、医師又は歯科医師としての品位に欠け、職業倫理に反する行為である場合があることから、そのような場合には、当該指定医制度に基づく行政処分とは別に医業停止または歯科医業停止の処分が下される場合があります。

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