行政処分の対象とするかを決めるのは、警察官や検察官といった捜査機関ではありません。そのため、捜査機関から「医業停止にはならない。」と言われても安心はできません。
・盗撮で警察に捕まったが、素直に犯行を認めたので、身柄拘束などはされなかった。医師免許のことが不安になり警察官に質問してみたが、警察官からは「そんなのは聞いたことがない。」と言われた。
・飲酒運転で検挙されたので、知り合いの弁護士に相談してみたが、弁護士からは、「罰金刑で終わりなので、医師免許には影響はないだろう。」と言われた。
このようなお問い合わせをいただくことがあります。
しかし、医師・歯科医師に対する行政処分はあまり広く知られていない分野であるため、警察官や検察官、弁護士でも、行政処分について知らないことがあります。実際、捜査機関から「医業停止にはならない。」と言われ、安心していたところ、都道府県庁から事案報告依頼を受けて、慌ててご相談にいっらしゃるケースもあります。
迷惑防止条例違反や交通事犯などで、素直に犯行を認め捜査に協力した場合、身柄拘束や厳しい取り調べもなく、正式な裁判(公判)も経ずに略式命令により罰金刑を受けることになります。このような場合、「大したことではない」と思いがちです。しかし、法律上は、公判を経ているか略式命令かにかかわらず「罰金以上の刑に処せられた」場合は、行政処分の対象となり得ます。
この点、法務省から厚生労働省に対して、罰金以上の刑に処せられた医師又は歯科医師の情報提供がされる対象となるのは、軽微な事件については公判請求事件に限るとされています。しかし、実務上、迷惑防止条例違反はここにいう軽微な事件とは解されていません。なお、交通事犯については、軽微な速度超過等、発生件数が多く、悪質性も低い事件は法務省から厚生労働省への情報提供の対象から外されていますが、飲酒運転等の悪質性が強いものは、情報提供の対象となっています。
医師・歯科医師の方は、罰金刑以上の刑を受けられた場合には、特別な注意が必要です。「大したことではない。」と思っても、当弁護士事務所の無料相談をご検討ください。