再教育研修を終えれば医業停止・歯科医業停止期間中でも病院等の管理者(医療法10条1項)に就任・復帰することができますか。
法解釈に争いの余地はありますが、医業停止・歯科医業停止(以下、両者を総称して「業務停止」といいます。)の期間経過後でなければ管理者の地位に就くことはできないと解することが安全です。
医療法10条1項は、「病院又は診療所の開設者は、その病院又は診療所が医業をなすものである場合は臨床研修等修了医師に、歯科医業をなすものである場合は臨床研修等修了歯科医師に、これを管理させなければならない。」と規定しています。確かに、法文上は、臨床研修等(再教育研修もここに含まれます。)の修了を要求するのみで、業務停止期間中ではないことは要件として明記されていません。
しかし、この規定を反対解釈して、再教育研修を終えて、その医籍・歯科医籍登録さえされていれば、管理者に就任することができると解してよいかというと、必ずしもそうとは限りません。同条がなぜ臨床研修等の修了を要求しているかという趣旨に照らせば、管理者自身が臨床業務(医業・歯科医業)を行いうることを求めているからであって、それをすることができない業務停止期間中は、当然、管理者としての要件を欠くとする解釈(勿論解釈)も成り立つためです。
この点の法解釈については、それが争点となった判例が(当事務所の知る限りにおいて)存在せず、司法的には未決着であると考えます。しかし、同法の所管省庁である厚生労働省としては、後者の解釈を採用しているものと推察されます。
実務上も、従前の管理者が業務停止処分を受け、再教育研修修了後、業務停止期間経過前の段階においてなお当該病院等の管理者のまま変更が未了である事例を覚知した場合、管理者の変更を要請する運用をしているようです。とすれば、再教育研修の修了前に一旦管理者を変更し、再教育研修修了の旨を医籍・歯科医籍に登録後、管理者の地位に復帰しようとした場合においても、そうした変更をしないようにという要請を受けることになるものと予測されます。
管理者変更が許可事項ではなく届出事項であるため、要請を受け入れずに届出を強行することは一応可能であるとも思われます。しかし、これに対して監督官庁当局がどう出てくるかは未知数と言わねばなりません。医療法上は、同法10条1項に関する厚労省側の前記解釈に基づいて、無資格者を管理者に充てているとして立入検査(同法25条)を受けたり、開設者に対して管理者変更命令(同法28条)が発せられたりすることが想定されます。なお、これらに対する拒否、違反については刑事罰(同法89条2号、87条3号)も設けられています。
してみると、いかに前記のとおり司法的には未決着であるとしても、敢えて強行するだけの実益があるかについては相当慎重に考慮すべきです。